漢方とは

 

西洋医学と漢方医学(東洋医学)の違いは、前者がミクロ(部分)を診るのに対して、後者はマクロ(全体)を診ます。西洋医学では、人の体や病気を細胞レベル、あるいは分子レベルまで解明しながら、日進月歩で発展しています。かつては死の病と恐れられていた結核さえも、抗生物質の誕生により治療できるようになりました。言うまでもなく現代医学は西洋医学が中心です。しかしその西洋医学でも治せない病気はまだ多くあります。特に生活習慣や加齢を原因とした慢性病は、症状の進行を遅らすことはできても、完治は難しいといわれています。

        

 

多くの人が抱えている腰痛を例に挙げてみましょう。腰痛は「腰椎椎間板ヘルニア」や「腰部脊柱管狭窄症」などのように原因が特定されているもの一部ありますが、全体の85%は原因が不明だといわれています。その場合、多くは消炎鎮痛剤が使われますが、これには効果を感じていない人も少なくありません。腰痛は、日常生活での腰へ負担や、天候、ストレス、加齢など様々な要因にも影響されます。また痛みという感覚は主観的なものでもあり、感情や過去の記憶などが関係することもあります。このように腰痛は、複数の要因が複雑にからみあっていることが多いので、結核を抗生物質で治すようには上手くいかない場合もあるのです。

 

ミクロ的に診る西洋医学に対して、漢方医学ではマクロ的、つまり体の全体を診ます。漢方医学の基本的な考え方に、「整体観念」というものがあります。心と体と自然は一体であることが健康だという思想です。主訴の腰痛だけでなく、尿や便の排泄具合はどうか、汗は出るか出ないか、冷感または熱感が有るか無いかなど、腰の痛みとは関係がなさそうなことまで問診します。このように症状や体質を含めた全体像のようなものを「証」と呼びます。そして証によって「方(方剤=くすり)」が機械的に決まることを「方証相対」といいます。この方証相対こそが、漢方医学の神髄だといえます。