五行の「金」は金属を表します。清潔や収斂といった特徴があります。
五臓の「肺」は清潔な空気を好み、気や津液を下方に集めるので金に属します。
肺の働きは、宣発と粛降を主ることです。
宣発とは、脾から運ばれてきた、水穀の気と津液を全身に届ける機能です。
粛降とは、大気中の空気を吸収して、気や津液を下に降ろす機能です。
肺が失調すると、咳、痰、喘息、息切れ、鼻炎、発汗異常などの症状が出やすくなります。
また風邪を引きやすい体質になります。

宣発

宣発とは上向きや外向きに発散する働きです。
脾の昇清作用により運ばれた水穀の気と空気中の清気を原料として、肺で宗気が作られます。
さらに陰性の気である営気と陽性の気である衛気も作られます。
営気は血の原料となり、衛気は体表を巡ります。
これらの気は、肺の宣発作用によって全身を巡ります。
衛気は体表を巡ることで、風邪や寒邪などの外邪が体内に侵入するのを防いでいます。
東洋医学でいう衛気とは、ウイルスや細菌などの病原体が体内に侵入するのを防ぐ免疫機能とみなされています。
病原体は主に鼻や口から侵入し上気道に感染しますが、この部位には粘膜組織があるので、粘液を分泌したり粘膜抗体を産生することによって異物を捉え排除することができます。
免疫機能は皮膚にも備わっています。
その主役となるのはランゲルハンス細胞と呼ばれる樹状細胞で、異物を感知して捕獲、排除する機能を持っています。
皮膚には水分を保持したり、常在菌によって肌の弱酸性を保つなどのバリア機能も備わっています。
衛気は、免疫機能の他に発汗をコントロールする働きもあります。
発汗することによって、気温が変化しても体内の温度を一定に保つことができます。
宣発作用には、気だけでなく津液を全身に巡らせる働きもあります。
津液の拡散は、水分(リンパ液、その他体内水分)の元となる血液を、心臓を介して全身に送りとどける機能だといえます。
浮腫は、宣発機能が低下したことによる津液の滞りと見なすことができます。

粛降

粛降とは清潔にする、下降するという意味です。
粛降作用とは、自然界の清気を体内に取り込む働きや、吸入した清気を腎に運ぶ働き、全身を循環した津液を回収して膀胱に運ぶ働きです。
西洋医学から見ると、清気を取り込むとは、大気中の空気を吸い込み肺に届ける作用です。
清気を腎に運ぶ働きは、肺で静脈血に酸素を供給する機能です。
津液を回収する作用は腎動脈から糸球体に輸送する働きで、腎の納気と共同で行われます。
全身を流れる血液の20~25%は腎動脈に流れており、腎動脈から輸入細動脈を経由して糸球体に入ります。
糸球体で濾過されると、尿の元となる原尿ができます。
原尿は1日に150~180ℓ生成されますが約99%は尿細管で再吸収されて再び血中に入ります。
濃縮された残りの約1%が尿として排出されます。
津液を回収するとは、このような機能と見なすことができます。