東洋医学では、自然界の気候変化を風・寒・暑・湿・燥・熱(火)の6つに分けて、これらを六気(ろっき)と呼んでいます。六気が強くなり過ぎると、健康に支障をきたすようになり、それは六気が六淫(ろくいん)という病邪に変化したからだと考えられています。
六淫が身体に侵入したことにより発症する病気を「外感病」といいます。

【風邪】 
風は春の主気であり、これが邪気に変化したものを風邪と呼びます。
風邪は、次の性質を持っています。
① 軽く、上昇しやすい
風邪は陽邪であり、上昇する性質を持っているため、主に身体の上部や肝を侵します。
② 変化しやすい
風邪による発病は急で、症状は変化しやすく、患部が移動しやすいなどの特徴があります。
③ 他の邪気と一緒に侵入する。
風邪は「百病の長」といわれ、一年中吹いているので、風熱邪、風湿邪、風燥邪、風寒邪などというように、
他の邪気と一緒になる性質があります。

【暑邪】 
暑は夏の主気であり、これが邪気に変化したものを暑邪と呼びます。
暑邪は、次の性質を持っています。
① 上炎する
暑邪は上炎し、身体上部の熱症を引き起こします。
② 気・血・津液(水)を消耗する
暑邪は腠理を開くので、気が外に漏れて気虚となり、また津液が汗として排泄するので陰虚にもなります。
※腠理:皮膚に存在し、気血水が出入りする穴のようなもの。
津液が不足すると血も不足し血虚となります。
③ 湿邪と一緒に侵入しやすい
暑邪は湿邪を兼ねて暑湿邪となりやすく、特に高温多湿の時期に多くみられます。

【火邪(熱邪)】 
熱(火)は夏の主気ですが、六淫邪気はすべて火熱邪気に変化するため、季節性がないともいわれています。
火邪と熱邪は同様の性質を持ちますが、火邪は熱邪よりもさらに強い邪気です。
暑邪と同様に上炎や気・血・津液(水)を消耗する性質を持ち、特に次のような症状を引き起こします。
① 神志を乱す
神志とは、意識や感情、思考などの精神的な機能をいいます。
昔は、精神を司る部位は脳ではなく心(心臓)であると考えられていました。
そのため精神症状を伴う脳の疾患は、心の病気とされていました。
② けいれんの症状を引き起こす
火邪は肝血を損傷し、筋肉のけいれんを引き起こします。
③ 皮膚の化膿や強い痒みを引き起こす
火邪は、強い炎症や化膿を伴う皮膚症状を引き起こします。

【湿邪】 
湿は日本では梅雨の時期の主気であり、これが邪気に変化したものを湿邪と呼びます。
湿邪は、次の性質を持っています。
① 脾を傷つける
湿は陰邪としての性質を持ち、陽気を傷め、気機の流れを阻害します。
特に脾を傷つけます。
② 重濁性・粘滞性
湿は、重だるい症状、ネバネバした分泌物が出る湿疹、帯下、尿の混濁などの症状を引き起こします。
③ 下降性
湿は、下降しやすいので、足のむくみ、腰痛、下痢などの症状を引き起こします。

【燥邪】 
燥は秋の主気であり、これが邪気に変化したものを燥邪と呼びます。
燥邪は、次の性質を持っています。
① 乾燥し、津液を損傷する。
燥邪は陽邪であり、上昇しやすく乾燥させる性質を持ちます。
口渇、のどの渇き、皮膚の乾燥などの症状を引き起こします。
乾燥の状態が長く続くと、津液を損傷します。
② 肺を傷つける。
燥邪は、口や鼻から侵入し、肺を損傷します。
咳や喘息などの症状を引き起こします。

【寒邪】 
寒は冬の主気であり、これが邪気に変化したものを寒邪と呼びます。
寒邪は、次の性質を持っています。
① 冷えをもたらす。
寒邪は陰邪であり、陽気を傷つけ、冷えの症状をもたらします。
② 凝滞性
気血の流れを滞らせて、痛みを引き起こします。
③ 収引・収斂性
収引・収斂性により、筋肉のひきつけなどを引き起こします。